匂いの力

なんとなく懐かしさを感じるたたずまいのお家には、必ずといっていいほど金木犀か南天の木が植えてあります。

浅草界隈を歩いているとあちこちで金木犀の香りが漂っていました。
匂いが記憶を呼ぶ現象を「プルースト効果」と呼ぶと、とある新聞のコラムに書いてありました。
名前の由来はフランスの文豪の大作「失われた時を求めて」だそうです。
私は残念ながらさわりだけで、結局読んではいないのですが、主人公が紅茶で湿らせたマドレーヌを口にした途端に、まるでページを操るように過去の自分をとい戻した、というくだりがあるそうです。
私にとってのこの時期の「プルースト効果」はみかん。
もう黄色く色付いたみかんが出回り始めたようですが、少し前までは早生のまだ青いみかんでしたよね。
あのまだ固くて、中の袋の皮も厚くて、すごくおいしいとはいえないけれど9月中ごろから10月にかけてのあのみかんを剥いた時のすっぱい匂い!
あの匂いを嗅ぐと、運動会の風景が浮かんでくるのです。
白地に何年度卒業生と書かれ、ロープを鉄杭に巻いて地面に埋め込んだテントに、端が生徒がむしってほつれかけているござの敷物。
その中で家族や親戚が輪になってお弁当を囲み、どこからともなく漂ってくるのがこのみかんのすっぱい香り。
値段も高くて、まだ甘くもないこの時期だけど、運動会のためにちょっぴり奮発して、手軽に食べられるみかんを買い求める、あちこちのお母さんやおばあちゃんの姿が見えてくるのです。
我家がいつもみかんを買っていたわけではありません。
ただなんとなく私にはこの時期のみかんの匂いは、日本中のお母さんの忙しそうでいて、なんだか嬉しそうな姿が見えてくるのです。
皆さんにもきっとありますよね、「プルースト効果」

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